アレクサンダーテクニークを学べば学ぶほど「自分」のことが信じられなくなります。

「なんで自分に都合よく解釈するのかしら

私のレッスンでは歌手や役者の方には必ず舌のトレーニングをします。なぜならば舌の使い方で声が全く変わるからです。

そのトレーニングの中で口を縦に大きく開けて「イ」の発音をする方法があります。これをやる度に「脳」ってあてにならないと思い知らされるんです。

舌の筋肉が足りないと私のアプローチでの「イ」の発音が中々出来ないのです。

(このやり方をきちんと説明するだけで長文になるのでここでは書きません。レッスンにいらして下さい)

ほとんどの人は「イ」の音ではなく

「エ」や「オ」の曖昧な母音しかだせないのです。

全く「イ」の音が鳴っていないのです。

にも関わらず本人には「イ」に聞こえるらしいのです。(ビックリでしょ?ぼけてませんよ)

私が「イ」でお願いします。と言っても「イ」って言えています。と言われます。

???????

全く「イ」になっていないのに本人には「イ」に聞こえてるらしい。

(どういう事?)

聴覚に問題あるのかと思い、私が相手が出した曖昧な母音を真似して出すと、生徒はポカーンと「先生何言っちゃってるの?」

くらいの顔をされます。

「いやいやいやいや!あなたこそ何言っちゃってるの?」

と私は思っても、相手は至極真面目な顔しています。

「あなたにはそれが「イ」に聞こえているの?」

「はい」

………

私が真似した音は「イ」に聞こえていないと理解しているのに、自分が出した全く「イ」になっていない音は「イ」に聞こえてる……

不思議……

これが1人だけなら、その人が変なのかなと思えるのですが、そんな事ない結構な人数というか割合でいるんです。

そこで私の仮説です。

皆は自分の中で「イ」を発音するつもりで出しているから、脳が勝手に思い込みで「イ」に聞こえさせてくれるんじゃないかしら?と私は考えました。

私の生徒達が変な人ばかりなのでは無い!はず。

人間の脳はとても自分に都合よくしてくれます。

記憶だって自分の都合に簡単に書き換えることも出来て、それが現実にあった様に思い込めます。これは本当なのです。

「脳」ってなんて私に優しいのかしら。

自分を一番守ってくれるのは「脳」です。

さて、それでもレッスンでは「イ」が出来ていない事に気付けないで終わらせる事は出来ません。

そこで

大きく開けての「イ」の発音をする前に、通常の「イ」の音を実際に発音してもらいます。口を横にしてもなんでも良いので「イ」の音を出してもらいます。

これは皆さん出来ますよ。

そしてその後、私のアプローチの「イ」をやってもらったところ

全員自分が「イ」を言えていない事に気付いてもらえました。(バンザーイ)

でも、そのまま繰り返しているうちにまた「イ」の音じゃ無いのにドヤ顔で「イ」が言えたみたいな顔をされる方も見られます。

ですから丁寧に必ず1回ずつ

普通の「イ」と私の欲しいやり方の「イ」を繰り返してもらいます。

まずは出来ない事を認める作業が無ければ、できる様になりたいとは思いません。

事実をしっかり受け止めてもらってからでは無いと誰も練習しませんから。

これも無意識に行ってしまう間違った癖の一つですよね。それに気付いてもらう事がアレクサンダーテクニークの始まりです。

アレクサンダーテクニークを指導する様になって「脳」って本当にあてにならないとまざまざと思い知らされます。

もう一度脳を訓練しなければならないと考える様になりました。

そういえば、私たちって脳のトレーニングってした事ないですよね。

計算したり認知したりする事で脳のトレーニングが出来ていると思っていますよね。

でも、これは計算との脳ではなくまた違う認識と防御だと思うのです。

脳科学の分野も進んでいますし、ここらへんの事実は近い将来解明されるとは思います。アレクサンダーテクニークは自分の体を使った「脳」のトレーニングだとも私は考えています。

私も自分の脳は信用していません。だって常日頃あてにならない事実ばかり見せられていますから、同じ現象が自分に起きているはずです。

事実を客観的に受け止められる「脳」になるためにアレクサンダーテクニークは有効であれば良いなと思います。

思い込みだって脳の誤作動ですし。

脳があてにならない話を始めたら一晩中でも話続けられますが、今日は「脳って自分に優しくあてにならない」という事を少しだけ知ってもらえたら嬉しいです。