先日、大学入学してからチェロを始めチェロ歴10ヶ月の方が集中講座に参加されました。
彼女は身長150cmの小柄な女子です。
チェロはフルサイズ。
もちろんチェリストの中にはそのくらいの小柄な方も沢山います。
しかしその様な方は子供の頃から始めているので、始まりはその体型に合った小さいチェロから始めていますので、チェロを演奏する動きにも慣れています。
大人になって始めるのとは違います。
小柄な人が大人になってチェロを構えた場合
普通に座ってチェロを構えると、チェロを脚で固定する為には踵が地面から浮くようになります。
そしてボーイングする部分も指板の部分に乗ってしまったりします。ブリッジ寄りには届きません。
手も小さいので左側のネックと指の使い方も大変です。
こうして考えてみると取っ掛かりとしては、ある程度身長がある人の方が有利なのかもしれません。
でも、小さい人には小さい体を使った弾き方や座り方があります。
まずはチェロの構え方
座り方を坐骨から少しだけ前に倒します。といっても本人はすごく前に倒れているようですが、見た目は真っ直ぐに見えますが。
チェロを自分の体に乗せるのではなく、チェロの重さの分だけ自分も少しだけチェロを押すような形にします。チェロと体の接点の力がゼロになる様に体を少し前に倒します。(あくまでもゼロになる分だけです)
そうする事で、ボーイングの位置が、楽に一番音が鳴る部分に届くようになります。
踵が宙に浮くのは良くないので、踵側に4cm程ヒールの代わりの台を作り足乗せてもらいました。
しっかりチェロが脚で押さえられるようになりました。
(お家での練習は、ボーイングも自分の目線(上)から見るのと、鏡を使って正面から見るのとでは違います。
始めのうちは鏡を使って軌道を見るのは大切です。)
手首のローテーション、弓の持ち方も大切です。
リーチが短い分、きちんと持たなければ棒の端から端までしっかり使えないので、体の機能に沿った腕や指の使い方はとても大切になってきます。
そして、これをやるだけで音量も音色も全く変わってきます。
力ではなく、体を使った心地よい音色が出てきます。
そして、左手も跳躍のための指や腕の使い方や弦の押さえ方を行うと、そんなに力を入れなくても楽に弾ける感じがしてきます。
身体の使い方、機能に沿った使い方は力を使っていない様に感じますが、体全体で自然に力が使われて支えられる様になるので、実は強い力が伴ってきます。
この原理がとても大切なのです。
大きな楽器は大きい人の方が有利に感じられます。
でもそれはあくまでも取っ掛かりの時の話です。
小さい人は逆に、自分の体を最大限に活かせる使い方をしなければ、音が鳴らせないので、始まりは難しいかもしれませんが、身体の基礎から学んでいけば、後から「身体の使い方」での問題が起きることは少ないと思います。
しかし、身体の使い方を知らずに無理して頑張ってやってしまった人は、ある一定の所からの上達が難しく、残念ながら故障が来る恐れもあります。
それを防ぐためには、各先生達が自分の楽器に対しての身体の使い方を理解している必要があると思います。
自分の経験は自分の体に合ったやり方であり、同じ体型ではなければ、それは違うものだと理解することも必要なのです。
音楽は「感性」が大切だと思われていますが、身体の使い方は「感性」ではなく、科学的な「理論」の元で指導されることが望ましく、その様に進んでいけたなら、もっともっと音楽を楽しむ人口が増えるのではないかとも思っております。